『造作建具』で可能な住まいの工夫
建具とは、開口部にしつらえられた、戸や窓、障子などの稼働部分とその枠の総称です。建具は風光を遮断し、空間を遮断する単なる出入口なだけではなく、その存在感は意外と大きく、インテリアの重要な一部となります。
部屋のアクセントとして目立たせるために、内装と合わせてのコーディネートはもちろん、室内に設ける窓など、造作することで、さまざまな工夫を凝らすことも可能です。
扉の設置の際には、壁紙の張替えなどにも影響がでますので、リノベーションの際に、まとめて行うことがおススメです。
こちらの記事では、部屋の間仕切りとして、壁や既製品の扉の活用だけではなく、造作の建具やその工夫をご紹介します。
主な建具の種類
具体的に『建具』とはどのような種類があるのでしょうか?
コーディネートとして活用できる建具をいくつかご紹介します。
引き戸
戸をレールや溝の上を往復させて開閉する扉で、開閉のスペースを必要としないため、省スペースで部屋を広く使えます。
また、少しの溝で開閉するので入り口の段差を無くすことができたり、戸を横にスライドするだけなので、小さなお子様やご高齢の方などでも簡単な開け閉めが可能です。
気密性はあまり高くありませんので、逆に脱衣所やウォークインクローゼットなど、風通しをよくして、湿気を解消したい場所に活用できます。他にも、家族の出入りの多い空間の場合、扉の開閉回数が多くなりますが、引き戸なら開閉のわずらわしさや、開閉の音もあまり気になることもありません。
また、扉を開けたままで、空間を広く活用するなど、部屋の利用方法によって開閉で調節することも可能です。
開き戸
蝶番や軸受け金物で止めた部分を軸として、扉が弧を描いて回転するドアのことで、洋室の扉として一般的に使用されています。
防音性が高いため、静かに過ごしたい勉強部屋や寝室などの個室に最適です。
引き戸と違い、扉を引き込む部分が不要なため、扉設置付近も壁として物を置いたり、コンセントやスイッチの設置、装飾品を壁に飾ることが可能です。
気密性も高く、冷暖房の効率も良いので、冷暖房をよく使用する部屋の扉に向いています。
開き戸同様、扉の色も白や木目を生かした茶系が主流ですが、カラフルな色や淡い色、黒や暗めのネイビー、こげ茶などのダークな色もあり、はめ込まれたガラスの種類も様々。
特徴のあるドアノブなどの選択で、おしゃれな扉にすることもできます。
折れ戸
折れ戸とは、複数の連なる扉を折りたたむ形で開ける扉で、クローゼットなどに主に使われる扉です。
扉を開けた際のデッドスペースが少なく開閉も左右フルオープンになるため、通路が狭い場所や、物の出し入れをするような空間に利用できます。
また床面にレールも必要が無いため、ごみやほこりが溜まらず、衣類などを収納しても常に掃除を気にすることもありません。
室内窓
室内窓とは、家の中で部屋と部屋の間に設置する窓のことです。
ベランダに通じる窓枠などは、マンションの共有部分にあたるので、基本的に交換やリフォームをすることは基本的にはできません。
しかし、室内窓はそういったわずらわしさもなく、デザインや形状、サイズの自由度が高く、選択肢も広いので、オリジナリティあふれる空間の演出が可能です。
造作『建具』で部屋を間仕切りする方法をご紹介
リノベーションする際に、部屋の間取り変更を検討される方もいらっしゃると思います。『部屋を分割する』『部屋と部屋の間の仕切りの位置を変える』など行う際に、壁を新たに作成したり、壁を移動したりと部屋の間仕切りとして一般的にイメージされるのは『壁』です。
しかし天井から床を完全に閉鎖してしまうものになり、部屋の用途によっては、圧迫感や不便さを感じてしまうこともあります。
その場合、『造作建具』を使って、部屋の利用方法に合わせた工夫を施すことができます。『造作建具』を利用した、部屋の間仕切りの工夫をいくつかご紹介いたします。
室内窓を取り付ける
部屋の仕切り一面を壁にせず、壁に造作の『室内窓』を取り付けることができます。
例えばリビングに隣接した部屋をテレワークスペースで使用する場合、壁が無いと家族の生活音が常に気になり、リモートなどの業務の際には家族とお互い気を遣ってしまうことになります。しかし全面壁にすると閉塞感があり、逆に疲れてしまうことも。
そこで『室内窓』を取り付けることで、リビングを介して陽の光を感じることもでき、風通しもよくなり、ちょっとした休憩の際には室内窓を開けてリフレッシュすることもできます。
他にも、子供のプレイルームなどで使用する部屋の場合も、隣の部屋にいても遊んでいる姿を確認できたり、室内窓から気軽に声掛けすることができたりなど、コミュニケーションができる仕切りとしても活躍します。
また、室内に『窓』を造ることで、インテリアとしても一気にオシャレになります。
部屋の内装の雰囲気に合わせて、窓枠の素材を木製にしたり、アイアン素材にしたり、またガラスも透けるものや、デザイン性のあるもの、目隠し効果のある凸凹の入ったデザインガラスなどであれば、光を多少取り込みながらも、プライバシーも確保できます。
間仕切り収納
部屋を完全に分断したいわけではないけれど、室内に仕切りを入れて用途を分けたい。
そういった場合には、天井部を開けた壁を配置する、なども可能ですが、『背板の無い造作収納棚』の活用がおススメです。
背板が無い収納棚だと、棚の仕切り方の工夫や、陳列する物の配置の仕方によっては空間が空き圧迫感を無くし、
仕切られた空間も暗くなることがなく、開放感がありながらも室内スペースを区切ることが可能です。
壁を『扉』に変える
壁であった部分をスライド式の引き戸に変える方法もあります。
開け閉めが可能になり、一つの広い部屋として利用したり、分割したりと部屋の利用するシーンによって空間の変更が可能です。
折れ戸式の扉にすれば、扉を閉めた状態で仮固定もできるので、壁として活用することもできます。
昨今では、ガラスがはめ込まれたカフェ風のデザインや、カラーも様々!
壁紙と同調した色にして、空間を広く感じさせたり、ブラックやネイビーなどビビットなカラーをもってくることによって、部屋のアクセントや、空間のテーマをより印象付けるインテリアとして活用することができます。
間口の形を工夫する
キッチンからパントリー、洗濯場への移動など、荷物を持って両手が塞がっていると扉の開閉も困難ですよね。そんな空間は、扉を設置せず、アーチ状にした壁にしてみてはいかがでしょうか?
間仕切り壁の一部をアーチ状にくりぬき、上部が半円形になった壁です。
円型のフォルムは柔らかく優しい雰囲気でインテリアのアクセントにもなります。
まとめ
さまざまな建具と造作の工夫をご紹介しました。既製品の建具の種類も、素材や色などデザイン性に富んだものがあり、部屋と部屋を仕切るだけの役目ではなく、部屋の入り口として部屋の中のイメージを印象づけることができます。
マンションのように限られた空間でも、部屋の使い勝手や、利用したい目的に合った建具を設置することによって、機能性を高め、インテリアの一部としても活躍します。
マンションリノベーションの際に間取り計画の工夫の一つや、インテリアコーディネートとして、造作の建具をぜひ活用してみてくださいね。